『Cool Share』 堀内正弘(多摩美術大学堀内チーム)

'11 カルチャー部門 エココミュニケーション グランプリ受賞

【概要】

なかなか進まないのが、一般家庭の省エネ。ひとり一台のエアコンを使うのは無駄なので、思い切ってエアコンを切り、涼しい場所を皆で楽しく共有しようというアイデアが「クール・シェア」。ご家庭で1つの部屋に、あるいはご近所で1軒に集まって「クール・シェア」。そして「ちょっとクール・シェアしませんか?」と声をかけあって、カフェや公共施設、公園の木陰などで楽しく過ごせば、お付き合いの輪も拡がり、近隣商業の活性化にも繋がる。

【受賞コメント】

受賞作品の制作に取り組んだきっかけを、お聞かせください。

東日本大震災のあと、デザイナーが何をできるか、ということを考えました。当時、夏の電力がひっ迫するという話が出ていまして、まずは計画停電を避けなければいけないと「計画停電回避プロジェクト」を考えました。ほぼ今の内容です。主旨は、夏場のピーク時、家庭のエアコンが電力の53%を消費するというデータがありまして、それを減らそうということでした。

事業所のほうは法律ができて、強制的にエネルギー削減を要求され、それは結果もよく出たわけです。でも家庭部門には、あまり効果的な政策がないんですよね。実際、去年の夏のあと、事業所は25%削減できたのに、家庭は6ないし7、8%しか削減できませんでした。

この活動のポイントは、家庭のエアコン、特にひとりで1台使っているエアコンをとめて、何人かで涼しい場所をシェアすること。つまり公共の場所あるいは誰かのお宅、そういったところで1台のエアコンを複数の人、出来るだけたくさんの人で使うことです。

受賞されたCool Shareは、昨年いろいろな場所で展開されているとのことですが、実際に展開するにあたって苦労されたのは、どのような点だったでしょうか?

「公共の、涼しい場所」ということで、場所を提供していただくのにいろいろ呼びかけを行ったのですが、やはり、反応のいい方とそうじゃない方がいらっしゃいました。私たち学生が商店街などをいろいろ回った時に、協力や理解をしていただくのに時間がかかったことが一番苦労した点です。

受賞された感想をお聞かせください。

うれしいですね。また、期待も込めての感想ですが、やはり去年は一般の人になかなかクールシェアを認知してもらえなかった。このプロジェクトができたのが梅雨明けの頃だったので難しかったということもありましたが、でも痛切に感じたのは、広く知ってもらうにはメディアなどの力が必要ではないか、ということです。だから、受賞をきっかけにそういう機会が増えるのではないかと思うと、それが一番うれしいです。

今後の活動や展開の計画を、お聞かせください。

家庭での電力消費量を減らすのは、とにかくメディアでのアピールしかないと思います。また、皆が集まれる涼しい公共の場探しということでは、そういう事業者の方の理解をいただく必要があるので、そのための地道な呼びかけをしていくつもりです。特に昨年は、公共の図書館が大口需要者の削減で閉鎖されてしまいました。クールシェアとしては、家庭部門の電力削減のために、公共の場所は閉じないでほしいと思っています。そういうアピールもしていきたいと思います。
後は、涼しい場所を皆で探すという活動です。今まで温度測定をしてきました。エアコンを使わなくても涼しい場所というのがいくつかあるんですね。遊歩道ですとか、公園ですとか、渓谷ですとか。都内のそういう場所をアピールして、そういうところに集まりましょう、ということをしていきたいと思います。

エコプロダクツ2011で行った公開審査では、審査員の方々から、ロゴマークなどを作ってあげましょうという話も出ましたね。

エコジャパンカップというのは、全く役所的ではなくて、非常にフレンドリーな関係が構築できる場所なのがありがたいですね。特に審査員の方から、その場でいろいろアドバイスをいただいて、そしてロゴが良くないという講評をいただいたので、どうしたらいいですか?と聞いたところ、話が展開して、なんと審査員の方がデザインしてくれる、ということになりました。そういう役所的でない、みんなで力を合わせて取り組むという空気感が非常に良かったです。

エココミュニケーションの可能性についてお考えがあれば、お聞かせください。

eco japan cupの中で、カルチャー部門は非常におもしろいと思います。それ以外の部門は、ものを作るという流れの中で何ができるかという提案がほとんどで、それはそれでとても必要なことです。一方、エココミュニケーションやエコミュージックなどは、物を作らないで、ライフスタイルの中でどうエコを実現するかという、とてもユニークで発展性のあるテーマだと思います。

(2012年2月13日インタビュー)